仕事の出先の町で昼飯を食おうとそば屋に入った。カウンターで値段相応の安っぽいほとんど衣で海老はオマケみたいな天そばを口の中にかきこんでいると隣の席に前歯のない小柄なおっさんがどかっと座って、かけそばとカレーライスを頼んだ。一目見て思い出した。俺はこのおっさんを知っている。そうともこの町は、かつて俺が日雇いの棚卸しのバイトをしていた、その事務所が立つ町だった。 棚卸し代行、店舗の閉店と共に店に入り翌日の営業時間までに売場とバックヤードとにあるすべての商品の個数を数え切る、そんな途方も無い作業をクライアントに代わってやってのける、そんな仕事だ。企業がわざわざ棚卸しをしたい時期というのはゴールデンウィークがどこも混むのと同じ理屈である一定期間に集中するので閑散期と繁忙期が極端に分かれる。だいたいは夏と冬だ。 繁忙期はまさに猫の手を借りたいので人海戦術で日雇いの条件で労働者を雇いまくる。「ものを数