約束の地 大統領回顧録Ⅰ (上・下) [著]バラク・オバマ 政治家の回顧録は、自己弁護や自慢ばかりでつまらない。リベラルなオバマは、現実離れした理想ばかり語っているのだろう。こうした予断は見事に裏切られる。 小説のように五感を刺激する描写や、葛藤や失敗を自省する筆致。こうした魅力ゆえ、退屈とはほど遠い。ユーモアもある。訳文はこなれており、印象的な写真も多い。しかも前半は、痛快な成長と成功の物語だ。さまざまな失敗や挫折、あるいは妻ミシェルとの行き違いも経験しながら、オバマは一気に大統領まで駆け上がる。肌の黒い自分が大統領になれば、マイノリティーの子どもたちの世界観を変えられるとの思いからだ。 ところが、一転して後半は重苦しい。大統領となったオバマは、金融危機やイラク・アフガン戦争といった積み残しの案件や、油田事故のような予期せぬ事件の対応に追われる。困難や障害は多く、なにより共和党は最初から
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