男性向け経口避妊薬(ピル)に長年取り組んできた科学者たちの悲願が、ついに叶うかもしれない。ある研究チームが、予備研究で男性向けの非ホルモン性ピルを開発したと発表したのだ。このピルを投与された実験用マウスは生殖能力を4~6週間失ったが、今のところ副作用は確認されていないという。2022年末から、人間を対象にした第Ⅰ相臨床試験(フェーズⅠ)が始まる見込みだ。 研究に取り組んでいるミネソタ大学のチームによると、このピルが標的にするのは、ビタミンAを人体と結合する物質だ。ビタミンAは哺乳類の生殖能力に不可欠であり、ビタミンA不足の食生活は不妊につながるとされている。 チームは長期間にわたる研究の末、細胞内でビタミンA(レチノイン酸)と結合するレチノイン酸受容体アルファ(RAR-α)というタンパク質の働きを阻害する化合物を発見した。RAR-αのほかにも同様の機能を持つタンパク質は2種類あるが、RAR