取材・文/柿川鮎子 写真/木村圭司 犬の飼い主さんのお宅には、狂犬病予防接種のお知らせの葉書が届く頃でしょう。「今年の分はすでにすませた」という声も聞こえます。法律で定められた飼い主の義務とはいえ、面倒に感じる人は多いでしょう。日本にはもう無くなってしまった病気なので、予防接種の必要性を感じられない人もいるはずです。約4000年前から人間を苦しめてきた狂犬病を知ることで、予防接種に対する重要性を新たに認識していただけたらと思います。 ■ハムラビ法典にも定められた狂犬病対策 狂犬病についての最も古い記録は、紀元前2000年頃まで遡ります。狂犬病の歴史は人類の歴史とともにありました。紀元前1930年頃に発令された、エシュヌンナ法典では狂犬病の犬の飼い主に対して、管理と罰金を定めています。飼育している犬が狂犬になったら、飼い主は罰金を支払うこと。さらに、その狂犬が人を襲って咬み、それが元で死に至