瓦経というものをご存知だろうか。 粘土板にお経を刻んだものだ。 瓦経|奈良国立博物館 なぜか平安時代ごろから、この瓦経を大量に作って土に埋めることが流行りだした。 それが父母の供養や自分の極楽往生に効くと思われていたらしい。 瓦一枚につき200字も入らないので、長いお経を瓦という媒体に収録するためには、膨大な枚数の瓦を焼かなくてはならない。そのため、多くのカネと手間がかかる。それゆえ瓦経の埋納は、たくさんの出資者を集めて遂行される地域の一大プロジェクトだった。 その瓦経が土中から現代人によって掘り起こされる。新しく瓦経が発掘されたとき歴史学者がまず注目するのは、(中世人からすればはなはだ奇異だろうが)彼らが精魂込めて彫りこんだお経の文章自体ではない。瓦経のなかには、本文(お経)といっしょに、それを埋めた年月日や出資者の名前が彫りこまれたものがある。歴史学者は本文そっちのけでそれに熱中するの