タグ

ブックマーク / nix-in-desertis.blog.jp (4)

  • nix in desertis:ゴヤとマネという様式分類上の困難を高校世界史でどう扱うか

    久しぶりの高校世界史深掘りシリーズ。 言うまでもなく,様式史とは同時代または後世の人間による整理である。ゆえに画家個人を必ずどれかの様式に入れないといけないわけではない。実際に,どうにも分類しがたい画家は存在する。しかし,専門家や好事家はともかく,一般教養や高校世界史のレベルだと,有名な画家をどこかしらのグループに入れることが要請される。この画家は一人一派なので型にはまらないのです,という説明を通すのは難しい(なぜ難しいのかわからないという人はすでに世間の知的水準や感覚から遊離している自覚を持つべし)。どこのグループにも入らない理由の説明をしようものなら,世の中には一般教養として求められるものが無数にあるのだから,込み入った事情を把握するくらいなら別のものを学んだほうが効率がいい,という反応をされてしまうのが常である。これは知っていてほしいと思う側にも望ましくない状況で末転倒である。だか

  • nix in desertis:イギリス農業革命と産業革命を,高校世界史でどう説明するか

    高校世界史深掘りシリーズ。またしても経済史になるが,こういうネタは経済史の方が拾いやすいというのはある。18世紀後半から19世紀前半にかけて,イギリスでは産業革命が起きているが,その前段階として農業革命も起きている。 農業革命とは,狭義には農業技術の革新である。細かく言えば農具の改良や土壌改良手法の確立等もあいまって全般的に改良されたようなのだが,高校世界史上でも取り上げられる最大の革新は,三圃制農業が四輪作農法(ノーフォーク農法)に切り替わったことであった。すなわち,輪作の周期に窒素固定を行うマメ科の植物(の根粒菌)を入れることで地力の回復を早めつつ,家畜用作物も生産することができるようになった。これによって休耕地が消滅し,穀物が増産され,同時に畜産物の肥育も容易になった。近代的混合農業の始まりである。 こうした農法の切り替わりは農村のあり方に波及することになる。イギリスの農村ではそれま

  • nix in desertis:高校世界史における中世・近世の「琉球王国」問題

    久々の高校世界史深堀りシリーズ。先日Twitterでこんなアンケートを取った。回答してくれた方々はありがとうございます。 ちょっと気になるので,アンケートをとってみたい。知っている人は知識で,知らない人は調べずにイメージでお答えください。 琉球王国の最盛期はいつ?(最盛期の定義が曖昧ということであれば,万国津梁の鐘の作られた時期をお答えください) — DG-Law/稲田義智 (@nix_in_desertis) June 3, 2020 正解は万国津梁の鐘の制作年が1458年なので,一番上の「1429年〜16世紀前半」が正しい。実際に琉球王国の最盛期はこの時期であるというのが一般的な認識であろう。後述の理由から正解者は少ないだろうと思っていたのでそこはあまり驚きがなかったのだが,こんなに綺麗に解答が割れたのは予想外だった。琉球王国の盛衰については,Call of Histroryさんの次の

  • nix in desertis:なぜイスラーム国は預言者ヨナの墓を破壊したか,と聖遺物崇敬の話

    ・預言者ヨナの墓、ISISが破壊 キリスト教などの聖地(CNN) 武装勢力に破壊されるイラクの文化遺産―預言者ヨナの墓も(ウォール・ストリート・ジャーナル日版) イスラーム過激派のISIS(自称「イスラーム国」)は,預言者ヨナの墓廟とされる建物を破壊した。これに対するリアクションで多く見られたものは,「狭量な過激派がまた異教の宗教施設を破壊したか」というものと,ヨナが『クルアーン』にも登場していることを知っている人たちの「イスラーム教での聖人であるはずのヨナの墓をなぜ」というものであった。後者の疑問については,実はかなりいいところを突いている疑問だと思う。ちなみに,2年ほど前にもアルカーイダ系の組織がイスラーム教の聖者の墓廟を破壊している。つまり,これはISIS独自の行動というよりも,過激派にある程度共通する行動といってよい。ここら辺について,ちょっとした解説を試みる。 まず,根的な話

  • 1