文政五年(1822年)、武蔵国多摩の百姓の倅、勝五郎(当時8歳)が何気なく発した問いがこの事件のきっかけでした。勝五郎は生まれる前のことを誰もが記憶しているものとそのときまで信じていたのです。 自分が人と違っていることに気付いた勝五郎は誰にもいわないよう懇願するのですが、やがて家族にも知られるところとなり、前世での出来事、命を落としたときのこと、死後に出会った謎の人物のこと、この家に生まれたいきさつ等をとつとつと、しかし詳細に語ります。半信半疑の祖母に手を引かれ、とうとう前世に住んでいたという村へ出かけたところ、そこには勝五郎が語ったとおりの風景があり、家族が暮らしていたのでした……。 異端の国学者、平田篤胤が本人及び周辺の人々を取材した記録と奇想に満ちた持論を展開する『勝五郎再生記聞』を現代語訳。江戸の世を騒がせた輪廻転生譚をお楽しみください。 『仙境異聞』に記された寅吉との出会いから