とても恐ろしい舞台を観た。今、与野本町駅から電車に乗っているのだが、まだ震えが止まらない。間違いなく今まで観たすべての舞台の中で1番怖かった。彩の国さいたま芸術劇場で上演された、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の『カーネーション』。28年ぶりの日本での再演で、ヴッパタール舞踊団のレパートリーの中でも名作中の名作と誉れ高い。 でも私は途中から動悸が激しくなり、苦しくて苦くて何度か席を立とうと本気で思った。一面にピンクのカーネーションが広がる舞台を、裸の胸を隠すようにアコーディオンを抱えた美しい女性が微笑みを浮かべて歩いているチラシのビジュアルイメージからはまったく想像できない、人種差別、性差別、支配と搾取の構造、軽視される芸術と芸術家の無力、実際の暴力が、もはや簡単には解決しない複雑な背景と共に、こんなにも赤裸々に描かれていく作品だとは、無知な私は覚悟していなかった。 もう少し詳しく書くな