- 94 - 中井正一と『土曜日』のジャーナリズム 中 村 保 彦 1.読者論をめぐる視点 1.1 前稿からの課題 前稿(中村2008)において、コミュニケーション史の視点からいくつかの問 題を提示した。ひとつは、読者あるいは大衆が言葉を平等にもつためには何 が重要なのだろうか、との問題意識からリテラシーの概念を取り上げた。そ して、大衆の中に間主観的な合理の広がりを期待した中井正一が、影響力の ある実践を展開しえなかった理由の一つは、批判的リテラシーに相当する課 題が見えていなかったからだろうと疑問を呈した。また、コミュニケーショ ン史的な視点から『土曜日』の読者論に言及し、今日でこそ、マス・メディ アの圧倒的な隆盛のなかにあって、マスコミに対する「ミニコミ」的なメディ アの機能や情報が注目され評価されつつあるけれども、『土曜日』はその機 能においてミニコミ的なメディアの先駆だった、