「許永中旋風」を引き起こせたのはなぜか 3000億円が闇に消えた戦後最大の経済事件――。 こう呼ばれたイトマン事件から28年が経過、その主役のひとりである許永中氏が、『海峡に立つ 泥と血の我が半生 許永中』と題する自叙伝を、8月28日、小学館から上梓した。 帯に「戦後最大の黒幕」と書かれ、黒幕にフィクサーのルビが振られている。 当時、許氏にはいろいろな異名がつけられた。「在日韓国人実業家」というのは最も穏当で、「黒幕」「フィクサー」はもちろん、「闇社会の帝王」「企業舎弟」「仕事師」「事件屋」というものもあった。 共通するのは、「表社会」と「裏社会」の狭間に生息、両社をつなぐ役回りで、そうした自分の立場を自覚して、許氏は決して表に立たなかった。 それが虚像を膨らませ、おどろおどろしさとなって、「許永中とは何者か」が、様々な方向から語られた。 私もそのひとりであり、19年前、同じ小学館から『許