統合失調症研究や阪神大震災時の「こころのケア」の取り組み、随筆や翻訳など幅広い業績を残した精神科医、中井久夫さんが8月8日、肺炎のため88歳で死去した。「唯一の師」として敬慕してきたという精神科医の斎藤環さんが毎日新聞に追悼文を寄せた。 ◇ 血肉化された読書体験 中井久夫先生が亡くなられた。私は著書を通じて私淑してきた一ファンに過ぎないが、中井先生を唯一の師として敬慕してきた。 臨床1年目で手に取ったのが、今は絶版となった『中井久夫著作集』(岩崎学術出版社)の一冊『分裂病』だった。一読して圧倒された。とてつもない教養と繊細極まりない臨床眼、どんな作家にも似ていない、みずみずしくも重厚な文体。ただちに著作集全巻を買い求め、貪(むさぼ)るように読んだ。
![追悼・中井久夫さん<ケアの時代を予見したひと> 斎藤環さん寄稿 | 毎日新聞](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/d8ea58f53dfc5d484637bc40a35765960a7f4b55/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn.mainichi.jp%2Fvol1%2F2022%2F08%2F27%2F20220827k0000m040246000p%2F0c10.jpg%3F1)