毎年、世界中の研究者が、人類の知の蓄積に貢献している。 古生物学者や考古学者は過去の痕跡から、はるか昔に失われた生命や文明を明らかにする。生物学者や地球科学者は地球とこの星に暮らす生命の仕組みを解明し、天文学者は地球の外に広がる謎を追求する。そして医学者は、人体の複雑さとそれを脅かす病気を研究し、人類という種を守るための新たな手段を開発する。 人類の絶え間ない探求と実験からもたらされる発見は、予想もしなかったようなものであることも少なくない。今年、特に大きな驚きとなった発見を以下にまとめた。
一部の天文学者たちは、太陽系外縁のどこかに、地球のおよそ6倍の質量をもつ惑星が潜んでいると考えている。(CALTECH/R. HURT (IPAC)) 太陽系にまつわる謎のなかでも特に興味深いのは、海王星の外側に巨大な氷の惑星が本当にあるのかどうか、という問題だ。もし実在すれば太陽系第9の惑星となることから、仮に「プラネット・ナイン」と呼ばれているが、この仮説は、提唱された当時から賛否両論を巻き起こしてきた。一部の小さな天体が描く奇妙な軌道から推定されたものだからだ。 そんななか、米カリフォルニア工科大学の天文学者であるマイク・ブラウン氏とコンスタンティン・バティギン氏は、もしプラネット・ナインが実在するとすれば、これまで考えられていたよりも地球に近く、より明るく、見つけやすいだろうという分析結果を発表した。両氏による論文は、学術誌「Astronomical Journal」に8月22日に
トキソプラズマ症を引き起こす寄生虫トキソプラズマ(緑色)をとらえた透過型電子顕微鏡(TEM)の着色写真。 Image from Moredun Scientific Ltd./Science Source/Photo Researchers チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル(Jaroslav Flegr)氏は、大胆な主張によってここ1年ほどメディアの注目を集めている。トキソプラズマというありふれた寄生虫が、われわれの脳を“コントロール”しているというのだ。 トキソプラズマは通常はネコに寄生する。巧みな戦略をとることで知られ、ネコからネコへ感染するのにネズミを媒介とし、寄生したネズミの行動を変化させてネコに食べられやすくすることで新たな宿主に乗り移る。 ネコに食べられやすくするため、トキソプラズマがネズミに引き起こす行動の変化は、反応時間が遅くなる、無気力になる、危険を恐れなくなると
ガを研究していると自己紹介すると、「チョウとガはどう違うのですか」という質問をよく受ける。これはなかなか答えるのが難しい、回答者泣かせの質問だ。 日本では、チョウとガは完全に別の生き物のような扱いを受けており、チョウは昼間活動するきれいな虫といったプラスの印象、ガは夜に活動するあまりきれいではない虫といったマイナスの印象とともに語られることが多い。触角の形や止まる姿勢なども、チョウとガを区別する方法としてしばしば紹介される。 確かに、今あげたような区別点は、チョウやガの大部分に当てはまるが、どうしても例外があるため決定的ではない。特に、昼間に活動するガの仲間は、チョウのような派手な色や斑紋を持った種類が数多くいて、チョウとガがそっくりな斑紋をしていることすらある。いろいろなチョウとガの標本を数個体ずつ取り混ぜてお見せし、チョウとガに分けてみて下さいというクイズをしたことがあるが、全問正解し
NASAの火星探査車キュリオシティは、土壌の成分を調べるために、火星の岩にドリルで深さ5センチの穴をあけた。(PHOTOGRAPH BY NASA) 2012年以来、火星の表面を探査車が走っているのを、皆さんは覚えておられるだろうか? NASAの火星探査車「キュリオシティ」は、私たちの火星観を一変させた。(参考記事:「キュリオシティ、いよいよ本格稼働へ」) そして今回、かつての火星には炭素を含む化合物、すなわち有機分子があったことが明らかになった。有機物は、生命の主な材料になる物質だ。キュリオシティの調査から、火星の表面に大きな有機分子が見つかり、6月8日付け学術誌『サイエンス』に論文が発表された。(参考記事:「祝3周年!素晴らしき火星探査フォトギャラリー」) 1970年代に始まった火星の有機物探査が、初めて決定的な証拠をつかんだことになる。これまでの実験でも有機物の存在を示唆する結果は出
瀬戸内海に浮かぶ広島県竹原市の大久野島。周囲4キロあまりの小島は、1時間半もあれば歩いて1周できる。草地が広がり、海水浴場、展望台、桟橋が点在する。現在は観光地となっているこの島に住む人は多くなく、島を駆け回る野生のアナウサギ数百匹を守れる人は少ない。 大久野島が「うさぎ島」と呼ばれ、人気が上昇したのは2014年以降だ。ウサギの群れが女性に殺到している動画が話題を呼んだ。それからというもの、ウサギの大群がソーシャルメディアや映像で紹介され、島に観光客が集まっている。だが、人の干渉が増えたことで、大久野島はウサギにとって持続可能ではなくなってしまった。 なぜウサギかには諸説 そもそも、この島になぜウサギがいるのか。本当の理由は誰も知らない。 大久野島は「毒ガス島」と呼ばれることもある。戦時中、この地で秘密裏に毒ガス実験が行われていたからだ。作戦を隠すため、島は日本地図から消された。化学兵器の
トルコ、アンタルヤ県にあるミラの聖ニコラウス教会の内部。聖ニコラウスが葬られたと思われる墓が見つかったと考古学者らが主張している。(PHOTOGRAPH BY ALI IHSAN OZTURK, ANADOLU AGENCY, GETTY) サンタクロースはどこにいるのだろう? 北極でないことは確かだが、サンタクロースのモデルといわれる聖ニコラウスが眠っている場所についても、考古学者の意見は分かれている。(参考記事:「真夏にサンタ大集合、熱気あふれる写真23点」) 聖ニコラウスは、クリスマスのシンボル、サンタクロースのモデルとなったといわれる実在の人物だ。彼の墓について、トルコの考古学者チームが新たな可能性にたどり着いた。トルコ南西部、アンタルヤ県の教会にあるモザイクに覆われた床の下をスキャンして調査したところ、未知の墓の存在を示唆する結果が得られたのだ。(参考記事:「封印を解かれた「キリ
黒海の水深300メートル地点で見つかったオスマン帝国の沈没船。ある調査船が発見した41隻の沈没船の1つだ。(PHOTOGRAPH BY RODRIGO PACHECO-RUIZ, COURTESY EEF, BLACK SEA MAP) 先史時代の人々が海面上昇にどう対応したかを探るため、船員と科学者の国際チームが黒海で調査を行っていたところ、予想外のものを発見した。9~19世紀の千年間に沈んだ、極めて保存状態の良い41隻の沈没船だ。(参考記事:「沈没船から17世紀の王家のドレス見つかる」) チームは約1万2000年前に起きた黒海の拡大について調べるため、ソナーと遠隔操作無人潜水機(ROV)で海底地形図を作成していた。沈没船が状態を維持できたのも、実はこの拡大のおかげだった。 英サウサンプトン大学海洋考古学センターの所長で、今回の研究を率いるジョン・アダムス氏は「約1万2000年前に最後の
ボンベイナイトフロッグは、他のカエルとは違う体位で交尾を行う。その様子がビデオに初めて撮影された。(Video footage courtesy SD Biju) カエルは世界で約7000種が確認されていて、これまで知られている交尾の体位は6種類だった。ほとんどは、オスがメスの腰のあたりや脇の下をつかむ「抱接」と呼ばれる体位だ。できるだけ多くの卵子を受精させるため、この姿勢でお互いの体を密着させる。 しかし、インドに生息するボンベイナイトフロッグ(Nyctibatrachus humayuni)は、これまで全く知られていなかった「背中またぎ」と言う体位で交尾することが明らかになった。(参考記事:「逆立ちで交尾する新種のカエル、インド」)
海流調査への協力を求める約109年前の葉書。今年4月にドイツのアムルム島に漂着した瓶に入っていた。(PHOTOGRAPH BY THE MARINE BIOLOGICAL ASSOCIATION OF THE UNITED KINGDOM) あなたが孤島に置き去りにされた場合、助けを求めるメッセージを瓶に入れて海に流しても、誰かが助けに来てくれる可能性は非常に低い。その瓶が海岸に流れ着いて誰かに発見されるのに100年以上かかるかもしれないからだ。 マリアンネ・ヴィンクラー氏は、今年、ドイツのアムルム島の浜辺で古びた瓶を見つけた。瓶の中には1900年代初頭に書かれた葉書が入っていて、英国海洋生物学協会(MBA)のジョージ・パーカー・ビダー宛に返送してくれれば、謝礼として1シリングを進呈すると書かれていた。 MBAの広報担当であるガイ・ベイカー氏は、「私たちの記憶にあるかぎり、瓶まで戻ってきた
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