→紀伊國屋書店で購入 著者の近藤健二は古英語関係の著作のある言語学者だが、本書は言語の古層に測深鉛をおろし、アジア太平洋諸語の底流をさぐろうという壮大な試みである。 近藤が探求の手がかりとするのは能格言語だが、一般にはなじみがないと思われるので、すこし説明しておこう。 日本語でも英語でもかまわないが、大半の言語は動詞が自動詞だろうと他動詞だろうとかかわりなく、主語になるのは主格であり、目的語になるのは対格(目的格)である。 私は 泳ぐ。 I swim. 私は 魚を 食べる。 I eat a fish. ところが、能格言語に分類される言語では、自動詞の主語になる格は他動詞では目的語になってしまうのだ。他動詞の主語、というか行為者をあらわすのは能格という別の形式である。それに対して自動詞の主語=他動詞の目的語は形式が同一なだけではなく、格をあらわす助詞や活用をともなわないので、絶対格と呼ばれる