ちょっと古い話ですが、小さなお子さんを連れたお母さんが外来にやってきました。診察はともかく、「子どもにインフルエンザの検査をしてほしい」というのです。 お子さんが通園している保育園で、「インフルエンザではないこと」を確認してもらうように言われたというのです。本当にそう言われたかどうかわかりませんが、正直なところ困惑しました。インフルエンザでは、すぐに結果が出る簡易検査が普及しています。鼻の奥やのどを綿棒でこすって診断キットと反応させると、赤い線が浮かび出てウイルスの存在を知らせてくれます。この簡便さが、このような単刀直入な要求につながるのでしょう。 さて、ここからが面倒な話です。 大体、世の中で人間が作ったものに100%確実というものはありません。私たちが診断で用いる検査の性能を表す指標としてよく使われるものに、「感度」と「特異度」があります。 「A」という病気を診断する「T」という検査が