奇跡の脳 My Stroke of Insight A Brain Scientist's Personal Journey 著者:ジル・ボルト・テイラー 訳者:竹内薫 発行:新潮社 平成二十一年 (原書:二〇〇六年) 脳科学の本は、大抵つまらない。 かれらは脳が大事というが、だからつて中身をかえるわけにもゆかず、 結局シロウトにとつては、ほとんど意味がない。 ではなぜ本書を手にとつたかというと、著者である脳科学者、 ジル・ボルト・テイラーの経歴に興味がひかれたから。 ハーバード大学につとめていた三十七歳のとき、不幸にも脳卒中でたおれ、 それから八年ものあいだ、闘病生活をおくる。 脳の本質的な機能を、いわば「内側」から観察したわけで、 かつて見聞したことがないほど、説得力を感じる。 一九九六年十二月十日の朝。 テイラーは、はげしい頭痛とともに目をさます。 脳卒中の症状なのだが、この病気がお