物事が想定内であるか想定外であるか、考えるとほとんどが想定内ではないだろうか。なぜならば、想定の中か外かで論じられるような物事は、そもそも想定されていることが多い。想定はされているが対処はされていない、そういった物事を想定外と呼んで責任転嫁していることがほとんどだ。 僕の職場に、すごく偏屈なご老人がいる。彼はものすごい怒鳴る人で、何らかのミスをした若手を怒鳴って泣かせることを生きがいとしているような人だ。その人の怒鳴りレパートリーの中に「こんなミス想定外だ。おまえはすげえやつだよ」というものがある。 もちろん、すげえやつだと称賛しているわけではない。完全に皮肉だ。お前はベテランのこの俺すら想定していない途方もないミスをした。これは大変なことやよ、とそのミスが恐ろしく重大であるかのように言うのだ。それを聞いた若手は自分がとんでもないことをしでかしたと泣いてしまう。 けれども、そのミスは完全に