1994年,ボストン警察はロクスベリーにあるアパートの不潔な一室に閉じこめられていた4歳の男の子を助け出した。この子はその部屋で恐ろしく惨めな生活を送っていて,栄養失調になっていた。かわいそうに,その小さな手はひどい火傷を負っていた。薬物濫用者だった母親が,我が子の手を熱い蒸気の吹き出し口に押しつけたのだ。言いつけに背いて,母親の男友達の食べ物をつまみ食いした罰だったという。しかも,何の手当てもされていなかった。 このむごい話は,すぐに米国でトップニュースになった。男の子は養育施設に預けられ,火傷治療のために皮膚移植が行われた。彼の身体的な傷は治った。しかし,発達過程の心に負った傷は決して癒されないことが,最近の研究で明らかになった。 子ども時代に身体的・性的・心理的虐待を受けると,大きくなってからも精神的トラブルを抱える場合がある。これまでの研究から,虐待と精神的トラブルの間には強い関連
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