福島県大熊町の双葉病院は福島第1原発事故直後、「患者を置き去りにした病院」と批判を受けた。自衛隊による救出時、病院に医師や看護師がおらず、患者だけが残されていたからだ。病院関係者は本当に患者を見捨てたのか。関係者の証言を基に真相を探ると、伝わっている話と違う事実が浮かび上がってくる。(勅使河原奨治、橋本俊) <暗転> 東日本震災当日の3月11日夜、双葉病院は暗闇に包まれていた。午後に起きた大地震で停電。非常用電源も夕方すぎに使えなくなった。看護師らは懐中電灯の明かりを頼りに、患者のたんを注射器で吸引したり、点滴を交換したりした。 病院は第1原発から南西4.5キロに位置する。精神科と内科が診療対象で、寝たきりの重症患者を含む337人が入院していた。 12日、夜明けとともに事態は暗転した。町の防災広報が原発の危機を知らせ、役場前からバスで避難することを呼び掛けていた。 午後2時ごろ、症