右派の「無念共同体」を封印 竹内 社会批判 奥底に自己批判 苅部 一筋縄でいかない戦後知性 橋本 戦後を代表する日本政治思想史研究者で、リベラリストの丸山真男が亡くなって今年で10年。歴史社会学者の竹内洋、日本政治思想史が専門の苅部直、本社編集委員の橋本五郎の3氏が、「戦後」と格闘した知の巨人の思想、その可能性について語り合った。 橋本五郎 戦後の丸山真男への評価は、民主主義の教祖のようにあがめるか、あるいは西洋崇拝者、大衆から遊離した啓蒙(けいもう)家として批判するかの両極になりがちだった。戦前の超国家主義を完膚なきまでに批判し、「戦後民主主義の虚妄に賭ける」と言い切った進歩的知識人の巨頭だっただけに、左右両派の評価の分裂は避けがたかったかもしれない。だが没後10年、著作集など資料が出そろい、ようやく冷静な丸山論ができる時代になった。その成果が竹内さんの『丸山眞男の時代』であり、苅部さん