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とはいっても、けして美しい話ではない。一頭のサラブレッドを中心にした群像劇だが、どいつもこいつもロクでもない。女はビッチで男は亡者、それも銭だったり馬だったり権力だったり、様々な欲と修羅を抱えている。 だが、人間臭ければ臭いほど、サラブレッドが崇高に見えてくる。夢だの祈りだの、粘ついた欲望を綺麗に言い換えただけの願望を背負い込まされた馬が可哀想だ(この「馬が可哀想」というのも、わたしの勝手な想いだね)。そういう人間の弱さや悪意・狡猾さと、サラブレッドの美しさと闘争心が、見事なまでに対比をなしている。 構成が見事だ。優駿「オラシオン」を真ん中に、牧場主の息子、馬主、娘、秘書、そして騎手それぞれの視点が、章ごとに入替わり、全部で十章を為している。これは第1レースから第10レースを指しているのではないかと。そして、最終レースの日本ダービーが終章、すなわち第11レースを暗示しているのかも。 それぞ
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