「人とは異なる力」を持った者が、ある「使命性」を帯びて特定の「敵」と戦う――。その構図から、ヒーローにとっての「戦う理由」は、多くの場合「社会の公共性」をめぐる議論と重ねて語られがちだ。特にアメリカンヒーローは、「911のトラウマ」「自国によるポリスアクション」を強烈に意識した演出や設定が施されることにより、「アメリカをどう描き直すか」という解釈を誘発する。 『スーパーマンリターンズ』では、“スーパーマンはもはや不要”という世論の元、崩れ行くビル街の中で“弱くなったスーパーマン”が再び“復活”し、“スーパーマンこそ必要”に変わる世界が描かれる。『スパイダーマン3』では、星条旗をバックにしたスパイダーマンが、“家族のために犯罪”を犯した砂状の体を持つ「サンドマン」(不定形の暴力)や、自らの暴力性が生んだ「ブラック・スパイダーマン」(鬼子)と戦いつつ、かつての友人「グリーンゴブリン」とも和解し