訓読 >>> 東(ひむがし)の市(いち)の植木(うゑき)の木垂(こだ)るまで逢はず久しみうべ恋ひにけり 要旨 >>> 東の市の並木が成長して垂れ下がるまで、あなたに逢わずにいたのだから、恋しく思うのは当然だ。 鑑賞 >>> 門部王(かどべのおおきみ)の歌。門部王は、長皇子の孫とされますが、敏達天皇の孫である百済王の後裔ともいわれます。神亀のころに「風流侍従」として長田王・佐為王・桜井王ら10余人と共に聖武天皇に仕え、天平11年(739年)に兄の高安王とともに大原真人の氏姓をあたえられました。『 万葉集』には5首の歌を残しています。 310は「東の市の樹を詠みて作る」歌。「東の市」は、平城京の東西二つにに置かれた市のうちの東の市。「植木」は、道に植える木。「木垂る」は、木が老いた様子のこと。「うべ」は、もっともだ。4年の国守の任期を終え、京に戻って東の市の並木を見て詠んだ歌とされます。 風流