齢重ねてくると、ずっと支えにしてきた親を、子どものほうが支える立場逆転の時期が到来するけれども、なかでも絶対にタイミングを逃さず全身全霊で引っ張り上げなきゃいけない時というのがあって、それに即時その場で気づけるか、気づいたとき即動けるかで、その先のすべてが変わってしまう事案というのがある。 一日二日寝かせてしまうと、同じことをしても全く取り戻せなくなってしまう不可逆的な事態。そういうときは恥じらいや照れを放り出して、「今やる、すぐやる」に限る。それが後になって、かけがえなく強大な意味をもつ。 ちょうどひと月前に、「あ、これはまずいな」と思うことがあった。うちの父は自称認知症だが、実際のところかなり物覚えがよく、いろんなことをしっかり覚えている。もちろん「歳の割には、そう言う割には」ということではあるが、とはいえだ。 それがひと月前に突然、その日の午前中にどこそこに行ったことを全く覚えていな