兄弟の葛藤、姉妹の対決 - その1 兄弟の葛藤であった『ゆれる』に続いて、姉妹の対決を描いた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』。原作は本谷有希子の小説(元は脚本)である。 両親の突然の事故死により、東京から故郷の山村に帰ってきた自称「女優」の姉の澄伽(佐藤江梨子)、大人しい妹の清深(佐津川愛美)、澄伽との間に秘密があって頭の上がらない腹違いの兄(永瀬正敏)と、被虐的と思えるほどお人良しで終始周囲から浮き気味の兄嫁(永作博美)。物語はこの四人を中心にテンポ良く展開していくが、ここでは姉と妹の関係に絞って見てみたい(以下、ネタばれあり)。 『ゆれる』とは逆に、東京に出て行ったのは姉、田舎に残っているのは妹である。姉の澄伽は、どうしても女優になりたいと父親を刃物で脅して上京したものの、その傲慢かつ自己愛の強過ぎる性格が災いして鳴かず飛ばずのまま。帰郷した彼女が妹を虐め抜き、それに妹が耐えるのは、