[読書] 永井均『西田幾多郎』(NHK出版) [12月からずっと、身内二人と自分の病気など立て続けでしたが、やや落ち着いたので、また少しずつ更新します。] 西田の「自覚」について、p48以下で永井氏は、西田の「場所としての私」「与格としての私」「無の場所としての私」を明晰に解き明かしている。私は、それを手がかりに論点を整理してみたい。西田は「自覚」について、「英国にいる自分が英国の完全な像を描く」という比喩を用いたが、私はそれを、「部屋にいる自分が、今この部屋の完全な像を描く」という場合で考えてみたい。 今、私は、この部屋の今の状態の正確な像を描いている。この部屋には、像を描いている私自身がいるから、私によって描かれるこの部屋の像には、像を描いている私自身がそこに描かれている。つまり、私の描いている像の中に、さらに小さな像があり、その像の中にもっと小さな別の像があるというように、この過程は