天下分け目の参院選が始まった。 地方遊説に出かける機会が多くなったが、移動の最中は貴重な読書の時間だ。 最近手にする本は、決まって幕末・維新もの。 ちょうど、92年から94年にかけて、読み漁ったものだ。 米国留学にも持って行って、勉強の合間に読みふけった。 その中から、海音寺潮五郎の秀逸作品『西郷と大久保』。 次のくだりは、長州の公武合体派の論客・長井雅楽に乗せられて、奸計を弄した薩摩の秀才・堀次郎をたしなめる西郷吉之助の言。 「・・・術策で天下のことが成ると思うとるのか。大体、人が術策を用うるのは、勇気がなかからだ。自分の身が恐ろしゅうなるから、術策に頼ろうとするのじゃ。天下のことは誠心をもってすべきであり、また誠心によらんければ成りはせん。誠心をもってするならば、たとえ仕損じても、感憤して続いて起つ人が出て来る。あっちをだまし、こっちを欺き、そげん卑劣なやり方で、天下のことが成るものか