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ブックマーク / youkoseki.com (16)

  • 誰かのナンバー

    youkoseki.com 誰かのナンバー 残業を終えた帰り道、酔っぱらい客でいっぱいのメトロ5号線を下りて、改札を通ろうとしたら、エラー音が鳴って止められた。 駅員ロボットがキャタピラを鳴らしてかけつけ、私の顔を一瞥して言う。 「GGカードを見せてください」 私はカードを差し出す。ロボットはさっとスキャンをして言う。 「このカードでは通れません。正しい自宅の最寄り駅を選んでください」 「えぇ……」私は答える。「履歴を見てよ。朝もこの駅を使ったし、上京してから、もう何年もこの駅が最寄り駅だから」 「このカードでは通れません」ロボットは辛抱強く言う。「履歴は確認しました。あなたは確かに今朝8時28分にこの駅を利用していますし、11年と32日前から継続的に利用していることも事実ですが、いまのあなたにはこの駅を利用できる権利がありません」 去年末から、駅の利用が許可制になった。都市の犯罪率が上昇

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    june29
    june29 2023/05/29
  • 人間の認証マーク

    youkoseki.com 人間の認証マーク 朝起きてスマホを見たら、動かない。画面が真っ暗なのである。充電が切れたかとケーブルを繋いでみたら、何の問題もなく画面がついて、充電は完了していますと表示が出た。とはいえ操作はできないまま。どこかが壊れたのかもしれない。 パソコンを引っ張り出してきたが、こちらは画面こそ最初からついたものの、ログインできない。顔認証や指紋認証は反応しないし、パスワードも通らない。パスワードを間違えたのかと何度も試しているうち、パソコンはロックされてしまった。次にログインを試せるのは二時間後だと言う。 仕事の連絡が来てるかもしれないなと思いながら、朝ごはんをべる。スマホのない朝なんていつ以来だろう。手持ちぶさたで、何度もスマホを手に取っては真っ暗な画面を見つめる。 動かないスマホを持ったまま仕事へ向かう。すると今度は駅の改札が開かない。助けを求めてロボット駅員を

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    june29
    june29 2021/08/22
  • キャンセル・カルチャーをキャンセルせよ

    youkoseki.com キャンセル・カルチャーをキャンセルせよ 毎日なにかが炎上している。 ミュージシャンの小山田圭吾はオリンピックの開会式に関わるというニュースが流れると、昔のいじめ自慢が話題になって炎上し、開会式への参加を辞退することになった。同じオリンピック開会式の演出を行っていた小林賢太郎は、過去の劇作でホロコーストを引き合いにしていたことが炎上し、開会式の前日に解任されることになった。 ホビージャパンの編集者はTwitterで転売ビジネスを容認する発言をして炎上退職処分となった。徳間書店の業務委託を行っていた編集者は、同じくTwitterで大坂なおみのオリンピック敗退を揶揄して炎上し、契約解除となった。 すべてこの一週間ほどのことである。なるほど、日はモラルにとても厳しい。 つまり開会式に関わった残りのメンバーは生まれてこれまで潔白な人達ばかりなのだろう。オリンピック選手

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    june29
    june29 2021/07/30
  • 2021年だから人類はHTMLを手打ちしろ

    youkoseki.com 2021年だから人類はHTMLを手打ちしろ 新しい年だ。人並に新しいことを始めようなどと考える人もいるだろう。しかし、なにを始めればいいのか? 僭越ながら一つ提案をさせてもらえるなら、私はこう言いたい。HTMLを手打ちしろ。ハイパーテキストマークアップランゲージを学べ。なぜなら、個人がコツコツとタグを手打ちしたウェブページには暖かみがあるからだ。 私は中学一年生のとき、はじめてパーソナルコンピュータを買ってもらった。中学受験がうまくいったら買ってもらえるという約束で、受験には失敗したのだが、買ってもらったのだ。中学時代、ほとんどずっとパソコンと向かいあっていたが、CONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATを書き換えてメモリ残量の上下に一喜一憂していた記憶しかない。あとA列車で行こう4や、ルナティックドーンのようなアートディンクのPCゲームWindows 3

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    june29
    june29 2021/01/01
  • 2020年のタイムマシン

    youkoseki.com 2020年のタイムマシン 大橋さんがまた転職した。今度はタイムマシンを開発するシリコンバレーの会社で働くと言う。 大橋さんは私が新卒で入社した会社の、一つ上の先輩だった。オンラインで事務用品を取り扱うその小さな会社は、入社して二年で倒産し、それから私も大橋さんも一つの会社に留まらず、留まれず、渡り鳥のような生活を続けている。 実際、大橋さんと前に会ったのも、彼女が転職をしたときの壮行会だった気がする。あのときはネットメディアの会社からオンライン教育系の会社に転職したのだったか、その反対だったか。 ともあれ、大橋さんの壮行会ということで、忘年会を兼ねて数名の仲間内で集まることになった。二人で昔よく行った焼鳥屋に時間通り着くと、すでにみんな飲みはじめている。 「それっていつの話」と順也が言う。キッチンテーブルに向かいで座る彼は、また一回り大きくなった。 「20年前だ

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    june29
    june29 2020/12/20
  • インターネットおじさんの2019年

    youkoseki.com インターネットおじさんの2019年 叔父と初めて会ったのは90年代の後半で、私がまだ高校生のころだった。叔父は長くアメリカに留学していたが、日の通信会社に就職が決まったので、帰国してきたのだ。叔父は日のことがよくわからないからと言って、私達の家のすぐ近くにマンションを借り、しょっちゅう私達の家に出入りするようになった。 叔父と私は、親子にしては近すぎるような、兄弟にしては離れすぎているような、微妙な年齢差で、はじめこそ、お互いにどう接すればいいのかわからなかった。しかし夜になると決まって叔父が家にやって来ては帰らないので、気付けば次第に話をするようになった。たとえば、私がテレビゲームにはまって遊んでいると、叔父はもっと面白いゲームがあると、聞いたことのないアメリカ産のゲームを持ち込んでくるといった具合に。 大学でコンピュータについて学んだという叔父は、私に言

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    june29
    june29 2019/12/13
    ああ、よすぎた…。
  • 普通の男

    youkoseki.com 普通の男 結婚適齢期というのは今ではすっかり聞かなくなったが、私が普通の男と出会ったのはそんな年頃だった。私の大学時代の友人が、普通の合コンをしてみたいと言い、普通のイタリアンレストランに集った連中の一人がその男で、もう一人が私であった。どうということのない普通の会社で働く、普通のサラリーマンで、私と同じ年。来週、普通にまた会ってみますかと言われ、普通にメールアドレスを交換した。名前と誕生日を組み合わせた、普通のメールアドレスだったが、それは私も同じだった。 私達は映画館で普通のデートを開始し、普通のイタリアンよりは少し高級な普通のフレンチでディナーを楽しんだ。気の効いたことが出来るわけでもなく、特別おもしろいことを言うわけでもなかったが、普通に優しい男であった。私達は普通に繰り返し出会うようになり、一年半後、普通に結婚をした。両家の親族だけで普通の結婚式を型通

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    june29
    june29 2019/10/26
  • Twitterと距離を置くこと

    youkoseki.com Twitterと距離を置くこと このごろTwitterと距離を置いている。同じようにTwitterと距離を置きたいという人に向けて、参考のためにその方法を書いておく。ただ、題に入る前にいくつか断り書きがある。 まず、以前と比べて個人的にはTwitterと距離を置いてはいるものの、Twitterは今も見ている。めちゃくちゃ見ていると言ってもいい。おそらく今もなお9割のTwitterユーザーよりTwitterを愛用していて、Twitter中毒から抜けきれたとは到底言えない。寝る前に缶チューハイを3空けてた人が、最近はだいたい1-2、たまに酒なしでも眠れる日が来た、というような話である。 そういうわけで、これはデジタルデトックスみたいな話ではない。私は今もスマホばかり見ていて、パソコンとほぼ一日中向き合っている。Twitterで失っていた時間を取り戻し、家族や友

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  • TikTokの発明:起動すると始まること

    youkoseki.com TikTokの発明:起動すると始まること 中国人の元同僚が何人か働いているので、TikTokについては少し前から注目していたのだが(少し前から注目していたアピール)、実際これはなかなか面白いアプリである。 なにがすごいって、起動するといきなりコンテンツが流れてくる。アカウント登録のフローがない。使い方の説明もない。なにかをフォローする必要もない。 20年ほど巻き戻って考えてみる。インターネット(厳密にはWWW)というのは、そもそも超能動的な動きが求められるメディアであった。スクロールしないと先に進まないし、クリックしないと次の画面に切り替わらない。 そんな中でネットユーザーはお気に入りのウェブサイトを見つけ、そこをブックマークするようになり、ネットサーフィンに没頭した人達は、はてなアンテナのような更新チェッカーを利用したり、RSSリーダーでフィードを購読するよう

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  • あえて悪いことをする人は悪い人であること

    youkoseki.com あえて悪いことをする人は悪い人であること セクハラやパワハラの問題がメディアなどでも大きく取り上げられる今日、表だって「セクハラ、パワハラ、大好き!」と言う人は限りなく少ない。しかし、現実にセクハラやパワハラをする人達は今もいる。 最近、そういう人達に共通する特徴を見つけた。そういう人達はよく、こういうことを言うのだ。 「パワハラがいいことだとは思っていない。自分も普段ならパワハラをやろうとは思わないし、他人のパワハラは嫌悪し、反対している。しかし、場合によっては、冗談で、あえて、パワハラみたいなことをすることがある。そうすることでみんなの笑いをとることができるからだ」 この形式には色々なバリエーションがある。「人に怒鳴ったりするのはみっともない。自分も普段は常に落ち着いている。しかし当に怒らなければいけないと思ったときは、あえて、声を荒げて怒鳴って見せること

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  • ルッキズムが否定されたとき、広告は何を語るのだろう

    youkoseki.com ルッキズムが否定されたとき、広告は何を語るのだろう 私は、広告というものが昔から好きであった。しかし広告のメッセージが、ときどき(あるいは頻繁に)息苦しく感じることも確かである。その息苦しさは、最近、Netflixが見事に広告にしてみせた。 私もこれはすごく良い広告だと思うのだが、ちょっと意地悪に言えば、あれをしろこれをしろと言っていた広告が、次にはリラックスして君は君らしくあればといいと言いはじめるのは、この業界の常套手段でもある。緊張と緩和、アメとムチだ。 一方で、なんだか潮目が変わりつつあるのかなと思うこともある。それはルッキズムに関することである。 たとえば、外見をよくしよう、というのは広告の基的なテンプレートであった。具体的には、お洒落になってモテよう、恋を見つけよう、できる男は見た目が違う、ママになっても綺麗に、何歳になっても若々しく、みたいな。多

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  • そごうの広告と、広告がジェンダーを語る覚悟について

    youkoseki.com そごうの広告と、広告がジェンダーを語る覚悟について 元旦、横浜へ遊びに行って、そごうに寄ったら、女性の顔にクリームがぶつけられている、インパクトのあるポスターを目にした。 帰宅して調べてみたら、まさに元旦から始まった、そごうの新しい広告らしく、「女の時代、なんていらない?」「わたしは、私。」といった文章が添えられている。 すでにネットでは賛否あるようで、批判したブログ記事が話題になっていた。また、「女の時代」という表現が昔のコピーの引用という意見もあった。 私も一日考えて、それなりにまとまった意見が出来たので、ここに書く。 構成の問題 賛否はさておいても、この広告は分かりづらい。理由として、私の見方では、一枚のポスターの中に、大きく三つのメッセージが含まれているからである。 一つのメッセージは「女の生きづらさ」である。文中にもあるし、インパクトのある写真はまさに

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    june29
    june29 2019/01/03
  • 2018年のダンシング・ヒーロー

    youkoseki.com 2018年のダンシング・ヒーロー 2018年、心に残った出来事の一つが、ジオシティーズ閉鎖の発表であった。正式名Yahoo! ジオシティーズは、2019年3月末に終了する。楽天傘下となっていたiswebライトが終了したのは2010年の10月末のことだから、それに比べればずいぶん長生きしたほうだろうか。 同じころ、はてなダイアリーも来春に終了することが発表された。こちらは原則、はてなブログへ自動移行されることになる。さすがはてな、と褒めておきつつ、そもそも個人でウェブサイトやブログを持つこと自体が時代遅れになってきた感は否めない。 インターネットに初めて触れてから20年以上が経ち、インターネットが永遠でないことをますます意識するようになった。そんなの当たり前と思われるかもしれないけど、少なくとも昔は、私も含めてみんなもっと楽観的だった。ぜんぶデジタルなんだから、永

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    june29
    june29 2018/12/02
    めちゃ沁みた…。
  • 1995年はすごかった The Game

    インターネットの思い出を並べかえてください。

    1995年はすごかった The Game
  • Instagram: 使わなくていいアプリの成功譚

    youkoseki.com Instagram: 使わなくていいアプリの成功譚 9月25日、Instagram創業者の二人、ケビン・シストロムとマイク・クリーガーが、経営から離れることを発表した。 Instagramがローンチしたのは2010年10月のこと。2012年にFacebookに買収されてからも、創業者の二人は変わらずCEOとCTOとして経営を取り仕切っていた。 私はその2012年から4年半ほどFacebookで働き、そのうち最後の1年と少しだけ、Instagram広告の担当をしていた。古巣なので贔屓もあるだろうが、控え目に言ってもInstagramの成功は特筆に値する。 たとえばInstagramは10億人を超える月間アクティブユーザーを抱えるが、ほぼモバイル専用アプリとしてこの規模に到達したのは、WeChatと、同じFacebook傘下のWhatsappくらいだろう。 Face

    Instagram: 使わなくていいアプリの成功譚
    june29
    june29 2018/09/27
    めちゃくちゃおもしろい。きれいなまとめに感謝です。
  • 1995年はすごかった

    youkoseki.com 1995年はすごかった 1995年といえばWindows 98が発売された年で、発売日には秋葉原中のパソコンショップが深夜営業をしていたものだった。あちこちに長い行列が出来たせいで、一部の行列で混乱が起き、「物売るっていうレベルじゃねぇぞ」の名言が生まれたのがこのとき。 アップルはアップルでスティーブ・ジョブズが復帰して、Think Differentのコピーと共にiMac、iPod、iPhoneを一斉発表したのが1995年だった。大きなスクリーンにハンマーを投げつける伝説的なコマーシャル(Copland)がすごく話題になって、今思えばIBMの一強時代に終わりを告げた象徴だった。 パソコンもスマホも、今でこそ海外メーカばかりだけど、当時はまだ国産メーカが元気だった。NECPC98やPC88、MSXなんかが人気だったな。スマートフォンはドコモがiPhone対抗に

    1995年はすごかった
    june29
    june29 2017/08/27
    読み手を試すなあ。これに対するいろんな反応を見ているとおもしろい。
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