短編集「青木きららのちょっとした冒険」で8人のきららの物語を描いた作家、藤野可織さん=京都市で2023年4月14日午後2時42分、清水有香撮影 性暴力に夫婦同姓、ルッキズム、母の役割……。女性に対するさまざまな抑圧が、物語のそこかしこに潜む。といっても、問題を糾弾するためにあえて取り上げたわけじゃない。「登場人物を女性というカテゴリーに入れる以上、書かざるをえなかった」と作家の藤野可織さん(43)は言う。その筆が最新短編集『青木きららのちょっとした冒険』(講談社)で描き出したのは、「まあまあ最悪」な世界だった。 九つの短編から成る物語には、8人の「青木きらら」が登場する。名前こそ同じだが、見た目も年齢もバラバラ。異なる人生を送るきららの物語だ。「一人の女性の話なんだけど、同時にいろんな女性でもある話を書きたいとずっと考えていたんです」と藤野さん。「自分一人の人生に閉じ込められている」のが現