リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko ブラジル代表を率いるチッチ監督。サッカー大国の重いプレッシャーがのしかかり、多忙を極めるなかでも、ワールドカップの全試合に目を通しているという。どのチームといつ当たってもいいように、万全を期しておくためだ。もちろんそのなかには日本も入っていて、「印象深かった」と言う。ブラジルのラジオ番組に出演したときも、日本の試合のことに触れていた。そこで、優勝候補国の監督に、あらためてその感想を聞いてみた。 「日本の2試合を見たが、90分間よく動き、ゴール前によくボールを運び、見ていて楽しいサッカーだった。私はこれまで何度も日本の試合を見てきたし、対戦したこともあるが、この2戦はピカイチの出来栄えだったろう」 開口一番、チッチはそう評した。 ブラジル代表チ
ズドラフコ・レイチ●文 text by Zdravko Reic 利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko 日本よ、見事だ。本当に見事だ。このようなエネルギー溢れるサッカーを見たとき、チームスピリットに触れたとき、私は大きな幸福を感じる。 試合前は日本がセネガルに対抗できるのか、私は懐疑的だった。セネガルの選手の身体能力は非常に高く、すこぶる強靭だ。野生動物のような鋭さを持っている。そんな彼らと互角の戦いをするのは、決して簡単なことではなかったろう。 それなのにデータを見ると、"デュエル"での勝利は日本がセネガルを上回っている。日本の選手が知能と工夫を駆使して競り勝つたびに、私は誇りのような喜びを感じ、思わず手を叩いていた。 中盤で屈強なセネガルの選手たちと渡り合った柴崎岳 photo by Sano Miki 1点のビハインドから同点にすることは、た
「(開始3分で)10人になってしまったことで、我々コロンビアには苦しい展開になった。その後、よく挽回して同点に追いついたと思う。できるだけのことをやったが、後半は10人で戦ったことが体力的にも響いた。もし11人対11人のままだったら、違う展開になっていただろうけど......」 ロシアW杯初戦で日本に金星を献上したコロンビアのFWホセ・イスキエルドは、神妙な顔つきでそう語った。 そこに、コロンビア人記者たちが矢継ぎ早に質問をかぶせた。 ――5000万人のコロンビア国民が、この結果に大変なショックを受けています。私たちは立ち直ることができるのでしょうか? 「真っ先に頭を上げ、胸を張って戦わなければならないのは我々選手だ。グループリーグはまだ2試合残っているわけで、自分たちはこれまでも苦しいシチュエーションのなかで戦い、切り抜けてきた。今回もそうなるはずだと確信している。たったひとつの敗北で、
W杯が始まった。各国の戦いを興味深く見ているが、なかでも特別な思いで追っているのは、かつてユーゴスラビアという名の同じ国であったクロアチアとセルビア、そして私が率いたことのある日本だ。 その日本が初戦でコロンビアに勝利した。W杯でアジアのチームが南米のチームを破ったのは史上初だ。まさに快挙という言葉がふさわしい。 コロンビア戦で決勝ゴールを決めた大迫勇也 photo by Sano Miki 正直、大会が始まるまで、日本がコロンビア相手に勝ち点3を挙げられるとは思っていなかった。日本が勇猛なチームであることは知っていたが、W杯前のデリケートな時期の監督交代は、あまりにもリスクが高かった。 おそらく西野朗氏が新監督に就任したことが、日本を救ったのだと思う。西野氏はもともとチームの中にいた人間で、詳細なチーム内の状況を熟知していた。新監督に与えられた時間は少なかったが、それがあまり足かせになら
木村公一●文 text by Kimura Koichi小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro 名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第23回 ついにプロ野球が開幕した。今シーズンのセ・リーグは、戦前の予想では3連覇を狙う広島が頭ひとつ抜けているというのが、評論家たちの見方だった。では、その広島を追うチームはどこなのか。奇しくも、その候補に挙げられている巨人と阪神が開幕カードで対戦した。はたして、この両チームは広島の強力なライバルとして台頭することができるのだろうか。名コーチとして鳴らした伊勢孝夫氏の目に、巨人×阪神の開幕カードはどう映ったのだろうか。 (●第22回>名コーチ怒る!「注目ルーキーの敵は、打撃ケージに群がる評論家だ」) 開幕スタメンを果たした成長著しい4年目の巨人・岡本和真 結論から言えば、両チームとも広島と優勝を争うだけのチーム力は十分に
今年のワールドシリーズはヒューストン・アストロズがロサンゼルス・ドジャースを4勝3敗で下して幕を下ろしました。1990年代後半には3年連続で地区優勝を果たすなど上昇気流に乗った時期もありましたが、2005年のワールドシリーズ初進出以降は主力選手の相次ぐ移籍もあって低迷していたアストロズ。今回、1962年の球団創設以来初となる世界一に輝くことができたのは、2011年から始まったチーム再生が身を結んだ結果と言えるでしょう。 ヒューストンの街に悲願の優勝トロフィーがやってきた 事の発端は、ヒューストンの実業家ジム・クレインがアストロズを買収した出来事です。2011年5月に買収が合意に達すると、クレインはさっそく同年12月にセントルイス・カージナルスからジェフ・ルーノウをGMに招聘しました。 ルーノウはもともと大手コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」に勤めていたエリートで、20
木村公一●文 text by Kimura Koichi小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro 名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第3回 《現在、セ・リーグは昨年の覇者・広島が快調に首位を走っている。その広島を7.5ゲーム差で追っているのが、金本知憲監督率いる阪神だ。この両チームは交流戦明けの最初のカードで対戦。結果は雨天ノーゲームを挟んで、広島が連勝した。このカードを観戦した伊勢孝夫氏は、結果以上に、両チームの間にある決定的な差を指摘した》 (第2回はこちらから>) 変幻自在のバッティングで広島打線を牽引する菊池涼介 一昨年までヤクルトのコーチをしていたこともあり、この両チームの対戦をじっくり見るのは久しぶりだった。しかし、すぐに両チームの違い、より正確に言えば"差"を感じた。特に目についたのが、打席における打者の"意識の差"だ。 たとえば、6月2
阪神・秋山拓巳が変わった。いや、"変わった"というより、"元に戻った"という表現の方がしっくりくる。 5月16日、秋山は中日打線を6安打、1失点に抑えて完投。12三振を奪って、今季3勝目を挙げた。 すでに今シーズン、秋山は先発で7試合(48イニング)を投げて防御率2.44と抜群の安定感を見せている。さらに驚くのは、四球がわずか3つという制球力のよさだ。この中日戦も無四球での完投勝利だった。 5月16日の中日戦で今季初完投勝利を飾った秋山拓巳 秋山については、個人的に忘れられない思い出がある。それは、彼が西条高校(愛媛)3年の秋のことだ。 ある雑誌の取材で、私は秋山の全力投球を受けた。この年、秋山は春のセンバツ、夏の選手権と2度の甲子園に出場し、実力を遺憾なく発揮していた。当然、ドラフト候補として注目され、知名度もグッと上昇していた時期だった。 高校通算48本塁打のバッティングも、高校生のレ
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