◆『 ぼくと透明なネコ』3 ネコの気まぐれに戸惑うほど「猫知らず」ではない。 ※「猫知らず」=ネコのことをよく知らない人 猫を飼えない男が猫語り ※「猫語り」=ネコについて語ること 短編『この場所が、いいねとあたなが言ったから、冬のその日はお猫記念日』 私はネコを飼ったことがない。ゆえに、気がついたときにはすでに猫好きになっていた、などという事情はない。 落ちたのは、大学二年の冬のことだ。 バイトで買った中古車、ジムニーで自宅アパートに向かっていた、家庭教師先からの帰り道。 小腹が空いたのを感じ、サークルKに入った。 冬は、おでん。チビ太のおでんだ。 専用カップに、大根、糸こんにゃく、ゆで卵、モチきんちゃく、の四点を入れてレジを済ませる。定番のラインナップだ。 外に出ると息が白かったが、私は駐車場の縁石に腰かけ、ふたを開けた。冬の外で喰らうというのも、趣があろう。 まずは大根。はしでホール