以前は市街地から観光客を送り込む大型バスが1日に何台も行き来し、人でごった返していた。街を歩けば日本語や韓国語、中国語、スペイン語、どこの国だかわからない言葉―あらゆる言語の楽しそうな会話が耳に飛び込んでくる。入り乱れる会話を聞き分けて、自分と同じ「関西から来た人」を見つけるのが、メイン・ストリートを歩くときの私の密かな楽しみだった。 廃墟のように静まり返る街。 3月のはじめ、ハワイに寄港したクルーズ船の乗客が新型コロナウイルス感染により死亡したことがわかり、間もなくして州内での感染者も確認された。同月中旬には飲食店の営業規制が始まり、店内での飲食ができなくなった。そのころからトイレットペーパーや缶詰、インスタント食品の買い占めが始まるなど、ハワイ住民の間でもどんどんシリアスな雰囲気が広がっていったが、この頃はまだわずかに観光客の姿があった。