本誌でも何度も伝えてきたように、掲載料さえ払えばきわめて甘い査読のみで、どんなひどい論文でも掲載してしまうオープンアクセスジャーナル「 捕食ジャーナル (predatory journal)」が問題になり続けています。これらは「ハゲタカジャーナル」と訳されることもあります。 そうしたジャーナル(学術雑誌)に掲載された論文は、たとえば生物医学分野であったら、同分野の論文データベース「パブメド(PubMed)」に収載されないこともあります。 コロラド大学デンバー校助教授で図書館司書のジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)は2010年、捕食ジャーナルと捕食出版社のリスト、通称「ビールズ・リスト」をつくり始めました。ところが2017年1月、このビールズ・リストが予告なしに閉鎖してしまったことも、本誌で伝えた通りです。その理由は、ビールズは雇用主からの圧力だと述べる一方で、上司や所属機関は
大手学術出版社エルゼビア社が発行するジャーナルの購読料をめぐる論争が、これまでにも何度か話題になってきました。2016年には、学術出版物のライセンス契約を取り扱っているドイツのDEALプロジェクトとエルゼビアとの契約交渉が決裂したのを皮切りに、同国の研究機関が同社の電子ジャーナルを見られなくなるという事態に発展しました(エルゼビアは2017年2月に、電子ジャーナルへのアクセス権を回復させると発表)。そして同様の問題は今回、韓国でも……。 ■ 韓国の大学コンソーシアムとの交渉 2017年5月、韓国の300を超える大学図書館がコンソーシアムを結成、42のデータベース・プロバイダーとの契約交渉を行ってきました。エルゼビアの科学・技術・医学・社会科学分野の3,500以上の電子ジャーナルと35,000タイトル以上の電子ブックを搭載するデータベース「ScienceDirect」へアクセスするための費用
出版界の オープンアクセス 化は、学術研究の知名度と影響力を高めると同時に、学術界でタイムリーに知識を広めることに役立っています。2015年に国際STM出版社協会が発表した報告書『The STM Rreport』によると、2014年には、英語で書かれている査読付き学術ジャーナルは28000誌以上、英語以外の言語で書かれている査読付き学術ジャーナルは6400誌以上ありました。そして、オープンアクセスジャーナルのディレクトリを提供するサイトDOAJ(Directory of Open Access Journals)上のオープンアクセスジャーナルの数も、増加の一途をたどっています。123におよぶ国の論文が掲載されており、英語で書かれているのが7245誌、英語以外の言語で書かれているのが2845誌。学術誌のオープンアクセス化が英語圏以外の国々にも急速に進んでいることは明らかです。 このようにオー
各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十八回目は、東京大学大学院経済学研究科の佐藤泰裕先生にお話を伺いました。インタビュー前編では、学会における英語での発表や、そこで得た大切な教訓について語って下さいました。 ■ 先生の研究分野、研究テーマを教えてください。 経済学の領域で、その中でも都市経済学、地域経済学、空間経済学について研究しています。経済学とは元々、社会のルールや制度などをどのように設計すればより暮らしやすくなるのかを考える学問ですが、その中で都市や地域間の人口移動に関する分析や、地域経済政策の外部性を分析するのが専門です。いろいろな都市にある共通の問題を探ったり、都市に関する仮説を実証したりといった具合です。 例えば最近、大都市の混雑とか通勤などの問題が挙がっていますが、なぜ都市に企業や団体が集まるのか、その理由を理詰めで考えてデ
より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「CUD: カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズ。第16回目の今回は、これまでにご紹介した色覚バリアフリーの資料作りのポイントを一挙ご紹介します。 ここでは、CUDOによる「CUDチェックリスト」から、学術発表に関係する項目をピックアップします。本連載で取り上げていない内容もありますので、 色覚バリアフリー の発表資料を作成するための参考資料として役立ててください。 色の選び方 ・赤は濃い赤を使わず、朱色やオレンジを使う ・黄色と黄緑は色弱者には同じ色に見えるので、なるべく黄色を使い、黄緑は使わない ・濃い緑は赤や茶色と間違えられるので、青みの強い緑を使う ・青に近い紫は青と区別できないので、赤紫を使う ・細い線や小さい字には、黄色や水色を使わない ・明るい黄色は白内障では白と混同
熟語「if any」の誤用は、日本人学者による論文で度々目にします。この表現は「もしあれば」、「存在する場合には」などといった意味を表すのに使用できますが、その用法は、文法的に誤っている上に曖昧な文意をもたらすこともよくあるため、学術論文では避けるべきです。 例文を見てみましょう。 [誤] (1) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions (if any). [正] (1) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions. [正] (1’) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions, if such exist. [誤] (2)
本連載では、掲載料さえ払えば、どんなにいい加減な原稿でも論文として掲載してしまう「捕食ジャーナル(predatory journals)」やそれを発行する出版社「捕食出版社(predatory publisher)」のことをたびたび取り上げてきました。そうした出版社やジャーナル(学術雑誌)をまとめてリストアップした「ビールズ・リスト(Beall’s List)」もあったのですが、2017年1月に閉鎖されてしまったことも伝えました。 インドのIT企業に勤める研究者で、医療ライターでもあるプラヴィン・ボージートは、この捕食出版という問題に興味深い角度から疑問を投げかけました。研究に何も貢献していない者でもお金を払えば、論文の共著者になれるのか、ということです。 ボージートがビールズ・リストに載っていた出版社を以下の方法で調査したところ、約16%が論文の共著者に名前を加えることに同意したといいま
「ウィキペディア」は、誰でも執筆・編集できるオンライン百科事典として知られています。何か気になることを調べるためにはとても便利なウェブサイトです。しかし、誰でも簡単に執筆・編集できることから、その信頼性には限界があり、論文などを書くときには、それを参照・引用することは慎重になったほうがいい、と一般的にいわれています。大学の教員のなかには、学生たちに対して、レポートを書くときにはウィキペディアどころかインターネットを参照すること自体を禁止する方もいるほどです。 しかし現実には、科学者もウィキペディアを参照しています。それどころか最近、科学者の「言葉(言語)」はウィキペディアの影響を受けている、と主張する研究結果が報告されました。 マサチューセッツ工科大学のイノベーション研究者ニール・トンプソンとピッツバーグ大学の経済学者ダグラス・ハンリーは、ウィキペディアが科学者の言葉にどう影響しているかを
いわゆる捕食ジャーナルや捕食出版社のリストとして知られる「ビールズ・リスト(Beall’s List)」が、予告なしに閉鎖されました。2017年1月15日のことだと推測されます。 本誌「捕食ジャーナル-倫理学分野にすら登場」でもお伝えしたように、学術界では「捕食ジャーナル(predatory journals)」や「捕食出版社(predatory publisher)」が問題になっています。捕食ジャーナルとは、掲載料さえ払えばきわめて甘い査読のみで、どんなひどい論文でも掲載してしまうオープンアクセスジャーナルのことで、捕食出版社とはそのジャーナルを発行する出版社のことです。そのいい加減さは、存在しない研究機関に所属する存在しない研究者の名前で、意味のないデタラメな文章を投稿しても、採択されてしまうことがあるほどです。そのため捕食ジャーナルは、疑うことを知らない若い研究者を掲載料目当てに食い
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