『誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性』光文社新書 田中潤・松本健太郎/著 副題にある「ディープラーニングの限界と可能性」についての対話を中心とした、手軽に読める格好の入門書だ。特に「限界」についての専門家による明け透けな本音トークは、巷にあふれる「ディープラーニング万能論」や「人工知能脅威論」がいかに陳腐で安易か、具体例を挙げて指摘する痛快な読み味がある。 音声認識エンジンという先端分野の研究開発者である田中潤氏を「専門家役」に据え、データサイエンスと人工知能について幅広いバックグラウンドを持つ松本健太郎氏があえて「素人役」になりすまして素朴な質問をぶつけるという形式が、うまい。この構成が、読みやすさと一般読者のかゆいところに手が届く内容を引き出す効果を上げている。 人工知能という言葉には、「人間のように考え、答えを導き出す脳のシミュレーター」というイメージがつきやすい