ブックマーク / m-majipan.hatenablog.com (153)

  • セントウソウ - 近場の博物誌

    早春に他の花に先駆けて咲くため「先頭草」が名前の由来との説がある。漢字では「仙洞草」と書き、仙人の棲み処(すみか)という意味だが、由来はよくわからない。漢方薬っぽいが薬効等も特に知られていないようだ。 多摩丘陵では、雑木林の林床や林縁の半日陰で少し湿ったところに群れ咲いている。草丈は10㎝程度しかない。花は5枚花弁の小さなものの集まり(散形花序)である。まだ他の植物が伸び出していないので、林の中で暗い中、白い花がよく目立つ。 セリ科の多年草。北海道から九州まで分布する日固有種。葉は3回3出複葉といって、大きなギザギザのある小葉が3枚で1単位となり、それが3組できて、さらに3組できる。そのため1枚の複葉は27枚の小葉からなる。瑞々しい緑色が美しい。 セリ科の植物は皆よく似ていて見分けるのが困難である。背が低いことと春の「先頭」に咲くことからセントウソウで合っていると思う。

    セントウソウ - 近場の博物誌
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    k10no3 2022/03/25
  • アオイスミレ(葵菫) - 近場の博物誌

    アオイスミレを多摩丘陵で探してみた。近場では一番早く開花するスミレである。陽だまりなどではタチツボスミレも咲き始めており、大きさや花色、葉の形が似ているため近くでもなかなか見分けることが難しい。これはと思うものをひざまずいて確かめることを繰り返した。 意外に早く見つかった。日当たりのよい果樹園の一角である。一旦、目が慣れると、畑の周辺や雑木林の林縁、切通しの斜面などにけっこう多いことが分かった。 一般にスミレの花弁(はなびら)は、上向きの2枚の上弁、横向きの2枚の側弁、下向きの唇弁(しんべん)の計5枚と、後ろ向きの距(きょ、蜜の入った袋状のもの)からなる。アオイスミレは上弁が立ち上がるのに対し、側弁が前に出るか丸まっており、前から見るとウサギかミッキーマウスの顔形のように見える。 タチツボとの違いは、花の形が異なることと、花茎に毛があること、距(きょ)が白くて太く、上に曲がって立ちあがるこ

    アオイスミレ(葵菫) - 近場の博物誌
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    k10no3 2022/03/22
  • ノジスミレ(野路菫) - 近場の博物誌

    スミレの仲間が咲き始めている。やたら数が多いタチツボスミレは陽だまりなどでは2月頃から花を見かける。しかし格的に咲くのはもう少し後だ。近場で一番早いアオイスミレは心当たりを探しても見つからなかった。その代わりに見つけたのがノジスミレである。公園の日当たりのよい石段のすき間などに点々と咲いていた。まだ葉があまり伸びていないのに一斉に花を付けている。 普通のスミレ(種名)とよく似ている。花期は3月から5月中旬でスミレより早く咲き出す。畑の周囲とか道端など人の手の入ったところに多いようだ。スミレの花色は濃い紫色だが、それより薄い色で、同じ色の距(きょ)が後方に突き出している。花びらが波打っていて形がスッキリ決まらない。そのため「野路」の名の通り素朴な印象を受ける花である。 葉は細長いスプーン形で、根元から直接出る。その点でタチツボスミレとは明瞭に区別される。この画像でははっきりしないが、葉、茎

    ノジスミレ(野路菫) - 近場の博物誌
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    k10no3 2022/03/21
  • スズメノエンドウ - 近場の博物誌

    日当たりのよい道端に、カラスノエンドウと入り混じるようにツルを伸ばしていた。近くに寄らないと生えていることすら気づかない。拡大すると、赤銅色のツルと巻きひげが作る曲線が独特で美しい。 カラスより小さいのでスズメノエンドウという。超小型ながら形や性質はよく似ている。もともと植物に動物の名前が付いていると、べられなかったり、薬草としての効果がなかったりする。要するに役に立たないという意味が含まれている。まさに雑草といった感じだ。 マメ科ソラマメ属の一、二年草。(秋に芽を出して越年する。寒冷地では春に芽を出す。)カラスノエンドウのように古代オリエント原産といった由緒(?)はなく、日州~沖縄)からユーラシア、北アフリカまで広く分布している。 葉は小葉12~14枚の複葉で先端が巻きひげになる。小葉は幅2~3㎜、長さ1.5㎝ぐらいの細長い卵型だ。画像のように巻きひげを絡み合わせて伸びあがるが、

    スズメノエンドウ - 近場の博物誌
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    k10no3 2022/03/08
  • コガモ大集合 - 近場の博物誌

    いつもの街中の川。瀬になって浅いところにコガモ(小型のカモ類の一種)たちが集まっていた。皆思い思いの格好で事中のようだ。1羽が羽ばたいてちょっと飛んだ。クェー、ケ、ケと聞こえる鳴き声を上げながら、3~4羽で並んで泳いでいるものもいる。土手の上の通行人は気にしていないようだ。 13羽写っているが画面外にさらに3羽おり、全部で16羽(♂11、♀5)だ。オスは体側の白線模様で遠くからでもわかる。先日点呼した時の集団が全部で8羽だったから倍増している。歩いて10分ぐらい下流にいた別の集団が合流したものらしい。いつも動いているし印があるわけでもないのではっきりしたことは分からない。 オスメスがペアで泳いでいるのはこれまで何度か見たことがある。しかしそんなに親密といった感じではなかった。今日は繁殖期(4月~7月)に向けて集まり合コン中なのかもしれない。しかしメスに対してオスの比率が倍以上とは厳しい。

    コガモ大集合 - 近場の博物誌
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    k10no3 2022/03/06
  • 輝沸石とセラドン石 - 近場の博物誌

    コロナ禍で屋内の生活が多くなった。そんな時、机の上に置いて時々ひねくって楽しんでいる石がある。眺めながら物思いにふけったりする。 画像は輝沸石(きふっせき)である。数年前伊豆半島の河津町浜海岸まで行って探したものだ。伊豆火山群の溶岩が海になだれ込んで海台(かいしょくだい、波に削られた台地)になっており、海と陸の絶景だった。沸石などの有名産地なのだが、採りつくされたのかたいしたものはなかった。これも左右4㎝ほどのカケラだ。 この石は小ぶりの結晶の集まりで、真珠光沢の輝きが素晴らしい。色は白色~透明で、よく光るのだが、私のカメラでは白い点のようになってしまう。しかし、自分で採集に行って見つけたものはやはり思い入れが違う。記憶がよみがえる。 青緑色の部分はセラドン石だ。以前七沢石(画像下)を紹介した時触れたことがある。海底火山由来の凝灰岩にみられるが、上の石のように溶岩のすき間を沸石とともに埋

    輝沸石とセラドン石 - 近場の博物誌
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    k10no3 2022/02/20
  • 枯葉の中の青葉 - 近場の博物誌

    真冬の雑木林の地面は、木々が葉を落として弱い陽光が届き、乾いて白くなった枯葉の反射もあって明るい。陽だまりで枯れ残りのタチツボスミレを見つけるとほっこりする。他にはほとんど何も無い。 中の小道を歩いていると下の画像のような植物が点々と生えていることに気づいた。どれも左右10~20㎝程度で小さく、枯葉に半分埋もれている。葉は少し痛んでいるが、新芽もあるようだ。 何だろう?どこかで見たことがある。枯れた花ガラなどが残っていればヒントになるのだが何もない。大体、木なのか草なのかもわからない。葉は3枚複葉で5枚のものもある。毛が多く根元の方にトゲがある。これまでの経験からするとバラ科に思える。 結論から言うと、バラ科のクサイチゴのようだ。これまで何度も見ているはずなのに印象が違っていてわからなかった。丈がせいぜい50㎝と小型なので、「クサ」という名前が付いているが、キイチゴの仲間である。小柄ながら

    枯葉の中の青葉 - 近場の博物誌
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    k10no3 2022/02/08
  • ヤブソテツ - 近場の博物誌

    近場でよく見かけるシダ。場所は丘陵地の雑木林の中で、古いコンクリートの石垣の隙間から多数葉が出ていた。小葉に切れ込みがなく、大きさが先端まであまり変わらない単純な形(1回羽状複葉)である。その点で似たものが他にほとんどなく、シンプルなところがかえって特徴になっている。(周辺の細い葉はイノモトソウ) オシダ科。州から九州の林内に普通。いくつかの亜種が知られている。画像のものは黄緑色の葉にツヤがほとんどなく、小葉の下部に三角形の出っ張りがあるので、ヤマヤブソテツという種類だと思う。ソーラス(胞子嚢群)は全体に散らばっており、胞子嚢には円形で白っぽい包膜が付いている。 ヤブ(藪)の中のソテツ(蘇鉄)というのが名前の由来だが、裸子植物のソテツにはあまり似ているようには思えない。 下の画像は、石垣のすぐ近くに生えていたもので、同じような特徴を持つ。濃い緑の葉の光沢が強く、小葉に出っ張りがないことな

    ヤブソテツ - 近場の博物誌
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    k10no3 2021/12/29
  • ツタが描いた絵:その後 - 近場の博物誌

    1か月ほど前(11月17日付)に、駅のフェンスに広がったツタが描く模様が風景画のようだと紹介した。その後紅葉が進むとともに葉が落ちて、葉に隠れていた枝(張り付いたツル)が現れ、より大きな絵として眺めることができるようになった。隣のフェンスのものも含めて障壁画(しょうへきが)のようだ。昔の日の城のフスマや屏風に描かれた絵のことで、豪壮な山水などが描かれる。ちょっとタッチが似ている。 毎日変化する。大きな葉から落ちるので、若い小さな葉が残って遠景の木立のように見えるのが面白い。しかし見れば見るほど枝(ツル)が山の稜線や谷に見えてくるから不思議である。下の方の枝が混んだ部分を近景の林とすると、景色の奥行きまで感じる。 朝は次々と電車が来てひっきりなしに人が乗り降りする。ちゃんと見えるのは電車が行った直後だけだ。慌ただしくて、気づく人もいないようだ。

    ツタが描いた絵:その後 - 近場の博物誌
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    k10no3 2021/12/25
  • 天然のドライフラワー - 近場の博物誌

    木枯らしが吹いて、雑木林は木々が葉を落とし、草も枯れて明るくなった。見るべきものもないように思えるが、普段目立たないものに気が付くようになる。 オケラ(植物)は9-10月頃地味な花を咲かせる。素朴な感じの野の花でつい見逃してしまう。何か所か見られるところを知っているが、今年も花の画像を取り損ねた。最近その場所を訪れると、ほとんどそのままの姿で枯れてドライフラワーのようになっていた。 この植物は、変わった名前の由来や山菜、漢方薬としての利用など話題が多いが、又の機会に述べたい。日全土に分布するキク科アザミ属の多年草。地上部は枯れるが根は生きていて毎年芽を出す。 花後は白い綿毛の付いた種を付ける。綿毛が開いた様子(下図)もなかなか見ごたえがある。そして綿毛がとんでしまって残った部分が冒頭の画像である。総苞(そうほう、集合花を包むガク)を取り巻く苞葉(ほうよう)が魚骨型と呼ばれる独特の形をして

    天然のドライフラワー - 近場の博物誌
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    k10no3 2021/12/19
  • ヒマラヤザクラ - 近場の博物誌

    晴れてはいても寒風が吹く中咲いている桜だ。前回と同じ公園で教えていただいたもの。高い木で、上の方で他の木に紛れて咲いているため今まで気が付かなかった。名札にヒマラヤザクラとある。 20世紀後半にネパールの元国王から日の桜などと交換に贈られたとのこと。その子孫であろう。ヒマラヤの高地に自生し、30mの高木になるそうである。寒冷な気候のものが、高温多湿の日でよく定着したものだ。 花びらは薄いピンク色で中心部の色が濃い。多数の雄シベが突き出していて、花の中心が黄色く見える。花びら全体がやや抑えた感じのピンク色のものもあるそうである。受粉のため、たくさん花を付けて数少ない冬の虫を集めているのだろう。新葉が花と同時に出るタイプで、幹や枝はヤマザクラに似てつややかだ。 花期は11月から12月。この時期園芸種の寒桜は時々公園や庭で見ることがある。ただチラホラ咲きに近い感じで寂しい。近場では真冬の2月

    ヒマラヤザクラ - 近場の博物誌
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    k10no3 2021/11/22
  • 街中のコガモ - 近場の博物誌

    いつもの住宅街の川。両岸に人通りが多いのに水鳥が多く集まる。先週短時間だが豪雨があり、かなり増水したので心配したが、カルガモたちは無事だったようだ。かえって澱(よど)みが一掃されて水がきれいになったように感じる。 見ると新顔がいる。コガモだ。日のカモ類の中で一番小さいのが名前の由来とのことだが、カルガモなどと一緒に泳いでいてもそんなに小さい印象はない。早めにシベリアなどから飛来して越冬し、春に子育てをする。植物で、今は群れで川に首を突っ込んで水草などをべるのに夢中のようだ。 オスは頭が栗茶色で、目の周りから後頭部にかけて緑色の縞がある。身体は灰茶色をしており、羽根の先にチラリと緑色が見えている。この緑色はいわゆるメタリックグリーンで、鮮烈な印象がある。一方メスは全体に褐色で黒い斑点がある。やはり羽根先に緑色の羽根がある。 もう少し近寄れればよいのだが、私のデジカメのズームでは画質はこ

    街中のコガモ - 近場の博物誌
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    k10no3 2021/11/17
  • ゴウシュウアリタソウ(豪州有田草) - 近場の博物誌

    研修農園では玉ねぎの苗の植え付けが終わり、大根などの秋冬野菜の収穫が始まった。 画像は収穫が済んだ野菜の跡地にすぐ生えてきた雑草だ。小さい草で葉はせいぜい5㎜ぐらいしかない。地面にへばりつくように放射状に広がっている。全体でも径4~5㎝しかないのにもう粒々の花(実)を大量に付けている。 アカザ科もしくはヒユ科(APG分類)とされる。春先から今頃までよく見かけた。極小の双葉から丸っこい葉を出す。成長すると葉の周りのギザギザが深くなり、茎も立ち上がって様変わりする。この性質のため長い間名前が決められなかった。 花は極小で目立たない。オーストラリア(豪州)原産の侵入植物。「ゴウシュウ」が名前に付いた植物は珍しい。類縁のアリタソウが、駆虫薬として佐賀県有田町で栽培されたためこの名がある。 ウチの農園では除草剤など使わないので、栽培は雑草との戦いになる。雑草取りは種を付ける前にするのが効率的なのだが

    ゴウシュウアリタソウ(豪州有田草) - 近場の博物誌
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    k10no3 2021/11/17