「じゃあ、アイルランドはどうですか? ダブリンは良い街ですよ。少し雨が多いけど……」 留学先を探していたとき、そう提案された。 他の候補地はどこも魅惑的なビーチやナイトクラブが自慢で、開放的になりきれない私には来世にとっておきたい目的地だった。 「雨の多い街、ダブリン」。 なんと心地よい響きだろう。 雨は嫌われ者かもしれないが、雨がもたらす効果は潤いだけではない。 雨のせいで多くの人が家の中でじっと時間を過ごし、雨のせいで頭の中で思考を巡らせているとしたら……それはとても魅力的だ。 アイルランドといえば、スカートを翻しながらステップを踏みたくなるようなケルト音楽や、古代ケルトの祭りが起源であるハロウィン、ギネスビールやアイリッシュパブなどが有名だが、同時に、多くの偉大な詩人を生んでいる。 「ケルト民族は心になんの傷を受けるまでもなく、幻視家なのである」 ——これはアイルランドの著名な詩人、
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