在宅勤務の気分転換のつもりで散歩へ出掛けたら、友人Fとばったり会った。Fは近所に住む幼馴染で僕と同じ46才、小中高12年間同じ学校に通っていたが、クラスや部活で一緒になったことはない。それでも仲が良かったのは、ピアノを弾いている、という共通項があったからだ。普通科県立高校でピアノ男子というのは珍しい存在で、放課後にピアノで遊んだことは、僕の人生のなかでも美しい思い出になっている。残念ながらFは大学卒業後に入った会社で心身を壊してしまい、そのまま自宅に引きこもっている。夏を思わせる強い日差しのなかにいるFは、白く、細長く、バースデーケーキのローソクのように溶けてしまいそうに見えた。 「引きこもりも散歩するのか」「散歩は昼間。朝と夕方より知っている人間に会う確率が低いから」声に、なんでお前がいるんだよ、という非難の気配があった。僕ら40代の男が真昼間に近所で顔を合わせることは少ない。だが、それ
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