あなたは天才と呼ばれる芸術家にモデルを頼まれたら、二つ返事で引き受けるだろうか? 2~3時間で終わると言われたにもかかわらず、18日間も延々と拘束されることになるとしても――? 人を見えるままに描くことを目指したポートレイト、細長い独特の彫刻で人気のアルベルト・ジャコメッティ。彼が生涯最後に描いた肖像画の制作期間を、モデルとなった美術評論家の視点から描いた劇映画『ジャコメッティ 最後の肖像』が公開される。 今回は、自身も人間を観察する文章やイラストを発表しつづける辛酸なめ子と、2017年夏に盛況を博した『ジャコメッティ展』を担当した国立新美術館学芸員の横山由季子に、映画から見えてくる「人間、ジャコメッティ」の魅力を語ってもらった。 一人の人と正面から、真剣に対峙するジャコメッティの姿には、本当に学ぶことが多かったです。(辛酸) —まずは映画をご覧になった率直な感想から伺えますでしょうか?