このお話の主人公は誰か? 「松風ばかりや残るらん脇差」と章題に名前が出て、中心に話が進む松風が当然、主人公と言えるでしょう。 ただ、このお話が収録されているのは、『武家義理物語』という題の短編小説集です。 この作品のコンセプトを踏まえると、別の人物が主人公と考えられます。 せっかくなんで、『武家義理物語』の序文を読んでみましょう。 武家義理物語 6巻. [1] - 国立国会図書館デジタルコレクション 武家義理物語 6巻. [2] - 国立国会図書館デジタルコレクション 井原西鶴『武家義理物語』貞享五[一六八八]年刊 ※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。 【原文】 それ、人間《にんげん》の一心《いつしん》、万人《ばんにん》共に替ハれる事無し。 長釼《ちやうけん》差せば武士《ぶし》、烏帽子《ゑぼし》を被《かづ》けバ神主《かんぬし》、黒衣《こくへ