散人は教養主義とは無縁だったからこの歳になるまで河上肇の『貧乏物語』を読んだことがなかった。しかし、ニッポンがどんどん貧乏になっている今、処方箋を求めてこの本を読んでみたら、驚き、内容が実に新鮮。アダム・スミス並みの博学と説得力のある文章にも感動した。この本を書いた頃の河上肇はまだマルクス主義者ではなかったと思う。むしろイギリスのロイド・ジョージに心酔していた。豊かな先進資本主義諸国における「貧乏線(Poverty line)」以下の民衆の数の比率を統計的に調べ上げ、経済の発展は贅沢品の生産に繋がっただけで貧困の解消には繋がっていないと喝破。これは全く正しい。その上で河上肇の書いた対策が掲題のもの。解説を書いている大内兵衛は「この段階での河上肇はまだ判ってなかった」と貶しているが、判っていなかったのは大内の方。あいつらマルクス経済学者の処方箋通りにやった国(ニッポンも含め)がその後どうなっ