電気自動車(EV)を巡る世界的な市場競争が、思わぬ産業を揺るがしている。家庭でおなじみの土鍋の生産が、年内にもピンチを迎えそうなのだ。急進する中国の企業が「ある鉱物」に目を留めたことが、混乱の始まりだった。 土鍋の産地支える「ペタライト」 鉱物は「ペタライト」と呼ばれる鉱石。焼き物の原料に加えると、耐熱性に優れ、急激な加熱や直火(じかび)にも強い製品に仕上がる。三重県の地場産業「四日市萬古焼(ばんこやき)」は1959年、全国に先駆けてペタライトを配合した陶土を開発した。台所にガスが普及した高度成長期と重なり、土鍋の国内シェアの8割を占めるまでに成長した。 ペタライトは国内で調達できないため、アフリカ南部のジンバブエから輸入してきた。陶土やうわぐすりといった窯業以外の需要は少なく、価格は安定し、萬古焼をはじめ佐賀県の有田焼など全国の焼き物の産地を長年支えてきた。