安心して老後を過ごすのに今の介護保険で十分だと思っている人はまずいないだろう。私たちの国ではお年寄りは家族が介護するものとされてきた。そうした常識が通用しなくなった今も介護保険は家族の介護負担を前提に組まれている。しかし、それも限界に近づいている。 要介護者の重度化は進み認知症は200万人とも言われているが、特別養護老人ホームや老人保健施設は満杯状態で、特に認知症の人は簡単には受け入れてくれない。有料老人ホームやグループホームも受け皿としては足りず、ほとんどは家族が疲弊しながら自宅で介護しているのが実情だ。100歳代の親を80代の子が介護している例も珍しくなくなった。親の介護のために仕事を辞めざるを得ない現役世代も多い。 精神科病棟には認知症のお年寄りが5万人以上も収容されている。精神障害者の「社会的入院」を解消しても、行き場のない認知症のお年寄りがその分病床を埋めているのだ。はたして長い
亡くなったお年寄りの無念さと高齢化社会の行く末を思うと暗たんたる気持ちになる。 札幌市の認知症高齢者グループホームで火災が起き、60~90歳代の7人の命が奪われた。 ほぼ1年前の昨年3月、群馬県渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」で10人が亡くなる火災が起きたのも記憶に新しい。夜間の発生で施設にいた職員は1人だけ。スプリンクラーの設置もなかった点など驚くほど共通点が多い。 たまゆらの教訓がなぜ生かされなかったのか。施設関係者はもちろんだが、行政も深刻に受け止めねばならない。 北国である。24時間稼働していた石油ストーブ付近が火元とみられている。警察と消防は、出火原因はもちろん、施設の防火体制や避難誘導に問題がなかったかなどを徹底的に調べる必要がある。 施設は、市の認可を受けて05年12月にオープンした。消防法で年1回義務付けられている消火器、誘導灯などの点検報告は翌年しただけで、市消防局
福島県いわき市泉町滝尻の老人介護施設「ROSE倶楽部粒来(つぶらい)」で26日夜、入所者の同市平、久野トシヱさん(88)と同市小名浜岡小名、水谷タキさん(90)が一酸化炭素中毒死し、2人が煙を吸って重傷となった火災で、施設では以前から夜間の防災体制の問題点が指摘されていたことが分かった。 1階リネン室付近の燃え方が激しく、県警いわき東署などは28日も実況見分して出火原因を調べる。 同署によると、施設は出火時、2階の居室に高齢の入所者8人がおり、夜勤の職員は女性1人だけだった。福島県社会福祉協議会は今年10月にまとめた調査報告で、この施設について「職員が1人で夜勤になるため、職員は夜間時の災害対応に不安を抱いている」と指摘していた。 施設側は毛布を使い、2階から避難する訓練を実施していたが、消防署の立ち会いはなかったという。報告書は「2階からの避難は夜勤者1人ではできないので、近隣の協力を得
福島県は5月、いわき市の有料老人ホーム「シルバーレジデンス」の運営会社に改善措置命令を出した。無届けで、経営陣が入所者を置き去りにするなどずさんな運営だった。その実情からは、高齢者福祉が抱えるあやうさが垣間見えた。 発覚のきっかけは、電気料金滞納だった。 JRいわき駅から徒歩5分の3階建てビルを東北電力社員が訪ねたのは昨年9月26日。「ディサービス南町」の看板がかかる玄関から中を呼ぶと、2階から現れた男性が言った。「電気を止めないでほしい。生命維持装置を付けた人がいる」。そこにいたのは、身寄りのない66~91歳の男性1人、女性5人。要介護度は3~5で、歩くのもままならなかった。 運営会社は市内の「有限会社ワールドアシスタンス」。06年7月、かつてビジネスホテルだった築25年のビルを月130万円の家賃で借りた。 1階はデイサービスセンター、2階が「老人ホーム」、3階が会社事務所として使われて
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