東日本大震災の発生直後に200人以上の住民が避難し、津波にのまれた建物がある。岩手県釜石市の鵜住居(うのすまい)地区防災センター。海に近く、津波の避難場所ではなかった施設になぜ人々は向かったのか-。この夏、調査委員会がまとめた中間報告書には、記者が2年半前の現地取材で感じた疑問の答えが記されていた。「取り繕い」「なれ合い」といった悲劇へ至る過程は、ここ神奈川でも、何げない日常として今この瞬間も重ねられているかもしれない、と感じられてならない。 1通のメールがセンター職員から送信された。 〈今回は2階を使って避難者を受け容(い)れたがこれで良いか?…〉 チリ地震による津波警報が出された2010年2月29日、住民34人が避難のために集まっていた。 防災センターは鉄筋コンクリート2階建て、海岸線から1・2キロ、標高4・3メートルに立つ。明治三陸地震津波の浸水区域のため、津波が予想される際