2010年8月23日のブックマーク (1件)

  • 初めて会ってから10年以上がたつ

    あのころはまだ二人とも高校二年生だった。夏の河合塾でしばしば顔を合わせて、同じ授業とっている人だな、と思いながらも会話を交わさずに通り過ぎていくだけだった。 友達とふざけている顔、一人で弁当をべている横顔、誰かを探してきょろきょろしている姿、じっとうつむいて電車を待っている影、そういうのを横目で見ながらいつも通りすぎていた。 相手もあれ、という顔はするもの何も言ってはこなかった。階段を一段飛びで降りてゆくとよく、同じように一段ぬかしで階段を上ってくる彼とはち合わせた。 目があって、でも何も言わずに踊り場ですれ違うだけ。 一言も交わさずに冬が来て、また夏が来て、そして冬になった。 わたしたちは、高校三年生になっていた。相変わらず同じ授業をとっていて、いつの間にか名前も覚えていた。 ぼんやりと同じ志望校だということは分かっていたけれど、相変わらず言葉を交わすことはなかった。 二人か三人しかい

    初めて会ってから10年以上がたつ
    kairei
    kairei 2010/08/23