甘酒は冬の飲み物と思われがちだが、江戸時代にさかのぼると、1年中親しまれていた飲料だった。当時、砂糖が庶民の手の届かない高級品であったため、それに代わる甘味源として飲まれていたのが、米と糀でつくる甘酒だった。特に夏には、エネルギー補給に飲まれていたという。 長い歳月を経て、現在、健康志向の高まりとともに注目の飲料となっている甘酒。ブドウ糖のほか、アミノ酸やビタミンを含み、「飲む点滴」と呼ばれることもある。 そんな甘酒を、江戸時代から伝わる製法でつくり続ける店がある。東京・千代田区外神田の神田明神(神田神社)の大鳥居脇にある甘酒屋「天野屋」である。老舗としてメディアに取り上げられることが多く、ご存知の方も少なくないだろう。ビルが並ぶ街並みのなかで木造平屋建ての風情あるたたずまいを見せ、千代田区の「景観まちづくり重要物件」にも選ばれている。 また、天野屋の糀室は江戸時代につくられた歴史的建造物