とうとう恐れていた日が来てしまった。わが家の息子たちが揃って中学三年生に進級した。私はこの日が来るのをもう何年も前から恐れていて、できればこのまま何ごともなかったかのように時が過ぎ、気づいたら二人とも立派な高校生になっていた、ヤッター! ……という奇跡の展開を夢見ていたのだが、そんな奇跡は起きるわけがなかった。世の中、そこまで自分に都合のいいようにはできていない。 私が恐れているのは、例えば二人のうちのどちらかが志望校に合格しなかったらどうしようとか、受験という大きな試練に立ち向かい、挫折して、心砕けてしまったらどうしようとか、そういったことではない。 二人の間の学力の差、体力の差、はては社交性のある(弟)なし(兄)といった残酷な現実をとうとう目の当たりにした自分が、右往左往する日が来ることに恐れを感じ……とか、そういうことでもない。本当のことを書けば、私は自分が心の底から恐れているものの
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