2021年、SNSを中心に使われていた「親ガチャ」という言葉が一般層でも注目を集めた。同年末の「大辞泉が選ぶ新語大賞」では大賞に、「現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞」ではトップ10にノミネートされたこのネットミームは、まさに現代日本の閉塞感を象徴するものだ。 言葉こそが社会を形作る。理念ある言葉は時代の宿痾(しゅくあ)を照らし出し、人々を鼓舞して未来へ踏み出す力を生む。人種差別撤廃をめざす公民権運動の指導者であったマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の「わたしには夢がある」演説が、1964年の公民権法の成立として結実し、アメリカ社会を変えたのはそのひとつの現れともいえるだろう。 だからこそ、言葉選びを誤れば社会が望ましくない方向へと進んでいくことも起こりうる。 では、「親ガチャ」という言葉が広く受け入れられた背景には何があるのか? そして、こうした言葉を多用す