(交通新聞社新書・840円) 昨年は青森市まで到達、3年後には開業から50年を迎える新幹線。その歴史を、大正時代の広軌鉄道計画までさかのぼり、縦横に論じた。 ルート選定などを巡る政治、開業後もスピードアップを続けた技術、昭和天皇や英国女王の乗車、労働組合と分割民営化まで、あらゆる分野に目配りが利いている。プロ野球セ・リーグの優勝争いで新幹線が名場面を作ったという挿話や、騒音公害などの反対運動にも触れる。しばしば政治家の利益誘導で生まれたとされる東海道新幹線の岐阜羽島駅が、ルート選定での妥協の産物だったという話など、興味深い。合間には、人気歌手らによるキャンペーンや作家の発言までをも絡めるが、文章はスムーズ。著者の、ライターとしての実力にも注目したい。(生)