地球で観測される宇宙線のエネルギー密度を説明するには,星が進化の最終段階で引き起こす超新星爆発のエネルギーの10%程度を宇宙線のエネルギーに変換することが出来ればよい。実際に超新星残骸から相対論的電子のシンクロトロン放射が観測されており,宇宙線の超新星爆発起源説はもっともらしい仮説である。超新星爆発が起こると爆風によって衝撃波が発生し,超音速で周囲に伝播する。衝撃波では超音速流の運動エネルギーが熱エネルギーに変換され,1億度を超える超高温のガスが形成する。一見すると非常に高いエネルギーのように思われるかもしれないが,宇宙線のエネルギーはこれを遥かに凌ぐ。流体力学的な衝撃波の性質では宇宙線は説明できないのである。 この衝撃波が伝播する媒質(星間物質)は極めて希薄で高温な電離したプラズマ状態のガスである。プラズマ中の衝撃波の興味深い特徴は,単に高温の熱的なガスを作るだけでなく,一部の非熱的な超