ある日、ぼくが行きつけのバーに足を踏み入れると、こんな会話がなされていた。 「わたしって○○が好きなんだよね」 「ああ、××ってやつですね」 「おー、わかっているじゃん!(握手を求める)」 バーのカウンターには5、6人の客がいたと思う。その店は小さくてカウンターしかなく、みんなで話題を共有するところだった。それにも関わらず、二人は二人だけに通じる言葉で盛り上がっていたのだ。 ぼくはすぐさま映画『婚前特急』のあるシーンを思い起こした。 池下チエの元カレである田無タクミに、新しい彼女ができた。チエはその手助けをしてくれたため、タクミはお礼がしたいと食事に誘い、タクミの彼女とチエの彼氏の西尾みのるも含めて4人でご飯を食べることになる。 みのるとタクミは初対面。なおかつチエと肉体関係がある同士ということで微妙な間柄なのだが、会話をしていくうちにお互い百人一首が好きだということがわかってくる。そして