「…分かんねぇけど」-。今季限りで退任したヤクルト・小川淳司監督(62)の口ぐせだ。 「○○は抹消すると思う」「3番は○○でいく」。記者との問答の後、持ち前のべらんめえ調でこうつけ加える。 「…分かんねぇけど」 分かんないわけはない。あるとき理由を尋ねるとこう明かした。「直前に状況が変わることもある。そうなったらみんなに嘘ついちゃうことになって申し訳ないからね」。そこまで先回りする気遣いの人だった。 いつも驚かされたのは選手の細かな記録を把握していること。あと○打席で規定打席に達する、あと○試合で記録に並ぶから…。外国人選手は契約のインセンティブまで把握し、人知れず起用に気を配る。 今年8月、最下位に沈み若手への切り替えを図る編成やコーチ陣の反対を押し切って、2軍調整中の大引を昇格させた。「達成させてあげたいから」。いぶし銀のベテランは自身の通算1000安打まであと「4安打」に迫っていた。